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伊藤計劃作品の3作品アニメ映画化プロジェクトの中でも、一番楽しみにしていた虐殺器官が思いもよらぬ制作会社マングローブ倒産にによる制作延期。
ジェノスタジオという虐殺器官を完成させるために設立された制作会社が引き継ぐことになり、なんだかんだでハーモニーから一年以上経った2017年2月に公開された。

作品としての素晴らしさは小説をもって語るべき点ではあるが、やはり映像の情報を通して見ると改めてこの作品の完成度というかメッセージ性の強さに気付かされる。

小説は飽くまでも文章であり、その文章の連なりから近未来の世界を思い描くわけだが、村瀬修功監督によって描かれた虐殺器官の世界が自分の思い描いた世界と重なっており、ひたすらに感動した。
別に自分の想像力が高いとは思っていないが、自分の思い描いた虐殺器官の先には村瀬監督の虐殺器官があるのかもしれない、と思うと何か嬉しい気持ちになる。

最後のクラヴィスとジョン・ポール、ルツィアの普遍的な人類への皮肉を込めた会話は非常に心に刺さるものだった。
目に見えるだけの世界が、この世の全てである。
確かにそうかもしれない。情報過多の世界でも、容易に世界の裏側で何が起きてるから知ることが出来る世界でも、結局のところ個人の世界の範囲は実は前時代から何一つ変わってないように思える。
世界の何処かで起きた凄惨な出来事を知ることは、世界の何処かである以上「自分の及ばない範囲の出来事である安堵」にしか繋がらないのだろう。

虐殺器官の先に待っているのが、ハーモニーで描かれる究極の管理社会の無機質な世界であり、2つの作品が公開されたことで、ようやく長く続いたプロジェクトに一旦の終わりが見えたように思えた。

時間はかかったものの、作品として世に出て本当に良かったと見終わった後心底感じた。